顎口腔の炎症と腫瘍Oral Surgery

Inflammation and Tumors
顎口腔の炎症と腫瘍

口腔の炎症

口腔の炎症とは

炎症は、有害な刺激に対する生体の防御反応であり、それがさまざまな症状となって現れたものです。そして口に生じる炎症は、歯を原因とするものと、そうでないものとがあります。 歯を原因とする場合、歯根の先や歯の周囲から細菌が侵入して感染することにより、歯肉などに炎症が生じます。原因となった歯の治療をしないと、再発したり、顎に炎症が広がって重症化することがあります。 歯を原因としない場合、舌、頬、唇などの口の粘膜に炎症が生じます。一般的に「口内炎」と呼ばれているもので、腫れはほとんど見られません。

口腔の炎症の原因

歯を原因とする炎症は、口の中の常在菌による感染が大多数を占めます。 歯を原因としない炎症(口内炎)は、虫歯や入れ歯など接触、噛むなどの外傷・熱傷などの物理的刺激、細菌やウイルスなどの感染による生物的刺激、薬剤や酸などの化学的刺激によって起こります。また、貧血や白血病などを発症したときにも炎症が生じることがあります。 主な原因として、疲労、体力の低下、ビタミンB12などの欠乏、金属アレルギー、口腔衛生不良、ストレス、などがあげられます。

症状の現れ方

口の中に痛みが生じ、しみたり飲食しにくいなどの自覚症状が現れ、粘膜の赤みやただれ、潰瘍などが見られるようになります。 ヘルペスなどのウイルス感染の場合は、発熱や全身の倦怠感など風邪をひいた時のような症状が現れ、口の中に米粒大の水泡が多数見られるようになります。この水泡が破れると接触痛を感じます。

治療法

歯を原因とする炎症は抗菌剤を使用します。 歯を原因としない炎症(口内炎)は、軽症であればうがい薬で口の中の衛生状態を維持し、市販の塗り薬、貼り薬、内服薬などを使用することで治ります。ウイルスなどを原因とする場合は、薬を服用しますが、やはり口の中の衛生状態を維持することが大切です。 口の炎症は、ほとんどの場合10日~2週間程度で治ります。それ以上長引いたり繰り返すようであれば、すぐに口腔外科を受診しましょう。

口腔の腫瘍

口腔の腫瘍とは

口の中には、内臓同様、さまざまな腫瘍が生じます。なかには悪性腫瘍(口腔癌)の発生も多く認められ、舌、歯肉、頬粘膜、顎骨、唾液腺などに生じます。一般的には、硬結(しこり)を伴う潰瘍(ただれ)や腫瘤(こぶ)が見られます。 癌か否かは、患部を一部切除して顕微鏡で病理組織検査を行ない、その後に診断します。これで癌と診断された場合、治療が必要となります。一般的に、発症後2週間以上経過しても改善しない異常は、癌を疑う必要があります。

口腔の腫瘍の原因

一般的に知られている原因は、飲酒と喫煙です。喫煙は、たばこに含まれる発がん性物質の溶出と、口の中への大量の付着を招き、飲酒は、アルコールによる体の抵抗力を弱めることにつながります。 熱いものや辛いもの、酸性・アルカリ性の強いものなど、刺激の強い食べ物を習慣的に食べることなども粘膜を傷つけるため、腫瘍が生じやすくなります。 また、不正咬合で傾いた歯に常時舌が当たっている、いつも舌の同じ部分を噛む、入れ歯が合わず常時一定の部分に刺激がある、など物理的な刺激も腫瘍の原因になります。

症状の現れ方

初期段階では無症状ですが、進行すると、潰瘍の発生、痛み、腫れ、歯の揺れなどの症状が見られるようになります。舌の場合は、ほとんどが舌縁部の後方に発生します。

治療法

まず、腫瘍の進行度を把握するため、X線・CT・MRI・超音波エコーなどの検査を行ないます。その結果を元に、腫瘍の大きさ、部位、転移状況などを確認し、食事・嚥下・会話・呼吸などの口腔機能を温存することを考慮しつつ治療法を選択します。

治療法としては、手術、放射線治療、抗癌剤治療の3つがあります。 有力な治療法は手術療法で、癌の周囲の正常な組織を含めて切除します。初期段階の小さな腫瘍であれば簡単な手術で治すことができ、口腔機能を温存することができます。後遺症も軽度となります。 また、放射線治療を行なうこともできます。

ある程度進行している腫瘍の場合、切除する量が増えてしまいます。口腔機能の障害を最小限に抑えるためには、体の他の部分からの組織移植が必要となることがあるため、放射線治療と癌剤治療を併用し、癌を小さくしてから手術を行なうこともあります。

良好な結果を導き出せるよう、全身の状態などを考慮して患者さま一人ひとりに合う治療法を選択します。